「ボナペティ」という言葉の原点は、フランス語の慣用句である「Bon appétit」にあります。直訳すると「良い食欲を」となりますが、一般的には食事を始める相手に対して「どうぞ美味しく召し上がってください」「楽しいお食事を」と声をかける定番の挨拶表現です。
本場フランスのガストロノミー(美食文化)において、シェフやギャルソンが客席に料理を届ける際に添える伝統的なフランス料理用語の一つですが、ドラマ『グランメゾン東京』における尾花夏樹の「ボナペティ」は、通常の接客用語の枠を遥かに超えた重みを持って響きました。
劇中の尾花は、かつてパリで二つ星を獲得しながらも大きな挫折を味わい、どん底から再び三つ星を目指す不屈の料理人です。彼が皿の上に創り上げた完璧な一皿を前にして口にする「ボナペティ」は、「俺の全てを懸けた料理を、五感のすべてで味わえ」という料理人としての矜持と、食べる者への最大限の敬意が凝縮された宣誓でもありました。