かつて人々の財布を行き交っていた銭の貨幣は、なぜ姿を消したのだろうか。その最大の原因は、太平洋戦争中から戦後にかけて発生した激しいハイパーインフレーションにある。物価が急速に高騰したことで、1円以下の単位である銭や厘は購買力を急速に失い、硬貨としての製造コストがその額面価値を大幅に上回る事態に陥った。
この状況に対処するため、1953年(昭和28年)に「小額通貨の整理及び支払金の端数計算に関する法律」が施行された。政府はこの法律に基づき、1円未満の通貨である銭および厘を法定通貨としての効力を失わせ、実質的に決済の場から姿を消させたのである。日本銀行が発行する紙幣や造幣局が作る硬貨から銭は消滅し、1円が日本の最小実体通貨として位置づけられることとなった。