本作の詩を手掛けた松本隆は、都会の片隅で繰り広げられるドラマを映画のワンシーンのように切り取る天才だった。彼がこの曲に込めたのは、表面的な悲恋の物語だけではない。70年代後半、急速に都市化が進む東京のドライな空気感と、その裏側に潜む個人の孤独感を対比させる企みがそこにはあった。
制作時のエピソードとして語られるのは、単なるノスタルジーへの拒絶だ。松本は過剰に湿っぽくなりみがちな演歌調の哀愁を排し、あえて洗練された都会的な言葉遣いを選択した。「車のワイパー」という現代的なモチーフを冒頭に配置したのも、当時の歌謡界においては極めて先進的なアプローチだった。悲しみをドラマチックに演じるのではなく、冷めた視線で自分を見つめ直す現代的な女性像が、松本隆の筆先から生み出されたのだ。