この異様な人物を生み出した最大の功労者は、言うまでもなく佐野史郎だ。アングラ劇団出身の彼が持ち込んだ即興性と独特の間は、シナリオ以上の深みとダークコメディ的な狂気をキャラクターに吹き込んだ。あの有名な「木馬に乗るシーン」も、現場での自由な発想と演じる側の計算された工夫から生まれた伝説の一幕である。
そして、その狂気を圧倒的な母性で包み込み、倍増させたのが母・悦子役の野際陽子だった。二人が織りなす親子の会話は、一見すると品格に満ちていながら、内側から狂気が溢れ出るような静かな緊迫感に満ちていた。野際陽子の凛とした佇まいと佐野史郎の怪演が真っ向から噛み合ったからこそ、あの唯一無二の歪んだ母子像が完成したのだ。