日本語の言葉遣いは常に変化している。文化庁が実施する「国語に関する世論調査」のデータを紐解くと、伝統的な故事成語・慣用句に対する理解や定着度に大きな揺らぎが生じていることが見えてくる。本来の意味とは異なる解釈が広く受け入れられる一方で、正しい語源や表記が失われつつある現実がある。
こうした現状に対し、岩波書店が発行する『広辞苑』をはじめとする各社の国語辞典の編集現場や出版業界全体は、強い問題意識を抱いている。辞書は単に言葉の規範を提示するだけでなく、時代ごとに生み出される誤用や変化をどこまで許容し掲載すべきかという葛藤に直面している。言葉の乱れを単なる「誤用」と切り捨てるのではなく、現代文化の文脈の中でいかに正しく継承していくかが問われている。