「君の瞳は1万ボルト」という、一見すると物理法則を無視した突飛な広告コピー。これをいかにして文学的かつ大衆を熱狂させるポップソングへ落とし込むかという作業は、並大抵の作詞家であれば筆が止まる難問でした。しかし、谷村新司の卓越した言語感覚は、この電撃のようなメタファーを「ひと夏の出逢いと、視線だけで心奪われる劇的な恋の瞬間」へと鮮やかに転換させました。
冒頭のフレーズ「吹きぬける風のなかを まあるい気球にのって」という軽やかな導入から、一転してサビで「君の瞳は1万ボルト 地上に降りた最後の天使」と爆発的な昂揚感を演出するダイナミズム。谷村は、女性の視線が持つ圧倒的な引力と自立した美しさを、1970年代末期の開放的な空気感と重ね合わせて描きました。単なる商品の販促ソングに留まらず、聴く者すべての胸に眠る情熱を直接刺激するストーリーテリングが成立していたのです。
そして、その詞世界に強烈な生命力を吹き込んだのが、堀内孝雄の天性のメロディセンスと、希代のアレンジャー・石川鷹彦の手腕です。堀内ならではの哀愁を帯びたフォークの叙情性と、当時の最先端を行くアメリカン・ポップス/カントリー・ロックの躍動感が融合。アコースティックギターの疾走感あふれるカッティングと、ドラマティックに駆け上がるストリングスが重なり合い、イントロの数秒でリスナーを異世界へと引き込む完璧な音楽的ギミックが完成しました。