世界的な大ヒットを記録した『ダンジョン飯』において、エルフの魔法使いマルシルが見せた表情の豊かさは、彼女の卓越した演技設計の賜物だ。ゲテモノ料理に対する嫌悪の叫びから、仲間への真摯な思いを吐露する繊細なトーンまで、1エピソード内での振り幅は凄まじい。単なるギャグシーンの誇張に終わらせず、生きることへの執着や倫理観の揺らぎといった重層的なテーマを声に乗せる技術は、まさに圧巻の一言に尽きる。
アフレコ現場において彼女は、コミカルなシーンであっても身体全体を使って感情の起伏を構築していたという。声のトーンを意図的にかすれさせ、生理的な嫌悪感や極限状態の疲労感をリアルタイムで立ち上げるアプローチは、ファンタジーアニメの枠組みを越えて観客の感情を激しく揺さぶった。このマルシル役での圧倒的なパフォーマンスこそ、彼女が名実ともにトップランナーへと飛躍した決定的契機といえる。