こうした伝承が単なる口伝にとどまらず、文言として定着していった証拠は歴史的文献の中に見出すことができる。肥戸平戸藩主・松浦静山が記した随筆集『甲子夜話』には、当時の風俗や初夢にまつわる俗信が詳細に記録されている。江戸後期の庶民がいかに夢の吉凶に一喜一憂していたかが、みずみずしいリアルな語り口で伝わってくる。
現在では国立国会図書館が所蔵するデジタルアーカイブや貴重書閲覧システムを通じて、これらの古典籍を誰でも容易に参照できるようになった。古い木版刷りの書物を紐解くと、江戸の町人々が新年の吉兆を待ち望み、刷り物の「夢札」を買い求めていた情景が鮮やかに浮かび上がる。伝承の変遷を一次資料で裏付ける作業は、歴史のリアリティを私たちに突きつけてくれる。