『アラバマ物語』を深く理解する上で欠かせないのが、複雑な人間模様を形作る個性豊かな登場人物たちです。主要なキャラクターの構図は以下の通りです。
【主な登場人物】
・スカウト(ジーン・ルイーズ・フィンチ):物語の語り手。お転婆で正義感が強く、父を深く尊敬する少女。
・アティカス・フィンチ:スカウトと兄ジェムの父親。誠実で高潔な弁護士。町中から孤立しながらも黒人青年の弁護を引き受ける。
・ジェム(ジェレミー・アティカス・フィンチ):スカウトの4歳年上の兄。裁判を通じて大人社会の不条理に苦悩する。
・ディル(チャールズ・ベイカー・ハリス):夏休みに町へやってくる利発な少年(作家トルーマン・カポーティがモデル)。
・アーサー・“ブー”・ラドリー:近所の屋敷に何十年も引きこもっている謎の男性。町の子どもたちから怪談めいた恐怖の対象とされる。
・トム・ロビンソン:暴行容疑で告発された真面目な黒人青年。左腕に重い障害を抱えている。
・ボブ・ユーウェル:町で最も貧しく素行の悪い白人一家の家長。トムを告発した張本人。
・メイエラ・ユーウェル:ボブの娘。父親からの虐待に怯えつつ、トムに罪を着せる19歳の女性。
物語の前半では、スカウト、ジェム、ディルの3人が、不気味な屋敷に閉じこもる「ブー・ラドリー」の正体を暴こうと繰り広げる子どもらしい冒険が微笑ましく描かれます。時折、屋敷の木の洞に小さな贈り物(人形や時計など)が置かれていることに気づき、子どもたちは見えない相手とのささやかな交流を深めていきます。
しかし、中盤からトーンは一変します。アティカスが、白人女性メイエラへの暴行容疑で逮捕された黒人青年トム・ロビンソンの国選弁護人に指名されたことで、町中の白人住民から激しい反発と脅迫を受けることになります。子どもたちも学校で「黒人好きの娘」と罵倒されますが、アティカスは「裁判で勝てないとしても、引き受けなければ自分は胸を張って教会へも行けないし、お前たちを叱る資格もなくなる」と説き、毅然とした態度を貫きます。