日本が官民連携を推進する一方で、海外では逆の潮流も存在する。その筆頭として必ず言及されるのが、2010年に実施されたパリ市水道再公営化(Eau de Paris)の事例だ。フランスの首都パリでは、1980年代半ばから25年間にわたり大手民間水企業が事業を担っていたが、最終的に市が運営権を買い戻し、公営へと回帰した。
再公営化に至った主たる要因は、四半世紀の間で水道料金がインフレ率を大幅に上回る約260%も高騰したことや、委託企業による不透明な内部取引、再投資の不足にあった。パリ市は公営化後、民間企業の利益配分を排除することで水道料金の引き下げや水質モニタリングの透明化に成功したと発表し、世界中の水政策関係者に衝撃を与えた。
海外ではボリビアのコチャバンバ水紛争やイギリスの一部地域における漏水放置問題など、性急な民間売却が引き起こした歪みも多数報告されている。これらの教訓が示しているのは、民間委託そのものの是非以上に「行政側の契約監督能力」と「厳しいペナルティ規定の有無」が生死を分けるという冷徹な事実だ。