「酸素系漂白剤なら色柄物を傷めるはずがない」という思い込みこそが、洗濯における最大の落とし穴です。関係省庁や消費生活センターに寄せられる衣類の変色・脱色相談を精査すると、色柄物の色落ちトラブルの大半は、強力な塩素系ではなく「日常使いの酸素系漂白剤」で発生しています。家庭内で衣類の色落ち事故を経験した人の約45%が漂白剤の使用中にトラブルを起こしており、とりわけポリエステル混紡やレーヨン素材では、不適切なつけ置きによって30%を超える色味変化が生じた検証例も報告されています。
なぜ安全とされる酸素系漂白剤で激しい色落ちが起きるのか。その背景には、汚れを落とす「活性酸素の酸化力」と、洗浄力を底上げする「液性のアルカリ度」という2つの変数が関係しています。酸素系漂白剤の主成分である過炭酸ナトリウム(粉末タイプ)は、水に溶けるとpH10〜11という強いアルカリ性を示します。衣類を染めている染料にはアルカリ性に極めて弱い性質を持つものが多く、繊維と染料を結びつけている化学結合が緩んで染料が水中に溶け出してしまうのです。
さらに、汚れを分解するために発生する活性酸素(ヒドロキシルラジカルなど)は、本来はシミの原因である有機物だけを狙い撃ちにするはずのものです。しかし、濃度が高すぎたり温度が高すぎたりすると、その酸化作用が過剰に暴走し、繊維の染料分子そのものを破壊してしまいます。これが「色柄物に安心」と謳われる酸素系漂白剤で、無残な脱色事故が起きてしまう決定的なメカニズムです。