ゴヤが描いたおどろおどろしい闇とは一線を画し、甘美で妖艶な魔女の像を確立したのが19世紀末の巨匠ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスだ。彼の代表作『マジック・サークル』に登場する女性は、杖で地面に円を描き、香炉から煙を立ち上らせながら秘密の儀式を執り行っている。
ロンドンのテート美術館で強い存在感を放つこのキャンバスは、観客を一瞬にして神秘的な古代の呪術空間へいざなう。暗い色彩の中に浮かび上がるしなやかな肉体。彼女の手にする鎌や大鍋は、危険な魅力をたたえたファム・ファタール(運命の女)の記号だ。象徴主義の運動が高まる中、ヴィクトリア朝の厳格な道徳観に対する美的な反逆が、この魔法の円環の中に込められている。