能力の高い人間が集まれば、より優れた意思決定ができる。この直感的な前提こそが、組織にとって最大の落とし穴となる。近年の意思決定論における分析が浮き彫りにしたのは、個人のIQの総和と集団の知性には相関がないどころか、同質性の高いエリート集団ほど危険なバイアスに囚われやすいという逆説的な事実だ。
優秀なチームほど、共有された専門用語や過去の輝かしい成功体験に過度な自信を持つ。外部からの批判を「無理解な者たちのノイズ」として一蹴し、内部の微細な違和感を「チームの結束を乱す無作法」として無意識に排除してしまう。心理的安全性を「摩擦のないぬるま湯」と履き違えた結果、健全な批判的思考が死滅するのだ。組織が均質化し、議論が予定調和に堕したとき、エリートたちは自ら盲目を引き寄せる。