渡辺謙の名がハリウッド映画の歴史に深く刻まれた契機は、言わずと知れた2003年公開の超大作『ラスト サムライ』だ。製作を手掛けたワーナー・ブラザースは、武士道の精神を体現する勝元役にふさわしい俳優を探し求めていた。そこで白羽の矢が立ったのが、当時日本国内で確固たる地位を築いていた渡辺謙だった。
主演のトム・クルーズ(公称170cm前後)と対峙した際、二人の身長差は約14cm。通常のアクション映画であれば主役を際立たせるためにカメラアングルで体格差を埋める工夫がなされるところだが、エドワード・ズウィック監督はあえてそのスケール差をそのままスクリーンに焼き付けた。勝元が馬上で見せる威容、太刀を構えた時のリーチの長さ、そして低く響き渡る声の共鳴。そのすべてが、184cmの肉体から放たれる本物の迫力に裏打ちされていた。
トム・クルーズ自身も渡辺の圧倒的な存在感に敬意を払い、スクリーン中央で堂々と対峙させた。これがアカデミー賞助演男優賞ノミネートへと繋がり、渡辺謙という巨星がグローバルな映画産業の中心へと躍り出る決定打となった。