Netflixで世界的な大ヒットを記録した韓国ドラマ『愛の不時着』。作中、北朝鮮の市場(チャンマダン)で南のシャンプーや化粧品、インスタントラーメンが密かに高値で取引されるシーンを覚えている人は多いだろう。あの描写のリアルな原体験こそ、まさに開城や金剛山に存在したコンビニの風景と地続きである。
開城工業地区の店舗で特に伝説的な存在となったのが、残業代や手当の代わりに配られた韓国製のチョコパイや即席麺だった。北朝鮮労働者たちはこれらを食べずに自宅へ持ち帰り、闇市へ流して現金化。北朝鮮国内の流通を刺激し、南の豊かな消費文化の片鱗を口コミで拡散させる起爆剤となった。自動陳列棚に整然と並ぶ商品群は、思想教育よりも雄弁に外の世界の豊かさを物語っていたのだ。