世間が抱きがちな「ヨーロッパの名門音楽家と結婚した女優の優雅なセレブ生活」というイメージは、現地での実生活を知ると小気味いいほど裏切られます。
オーストリアのザルツブルク近郊に構える自宅は、雄大なアルプスの自然を間近に望む静寂な地。しかしそこでの現実は、過酷な肉体労働の連続です。
本人の著書やインタビューでも赤裸々に綴られている通り、広大な敷地の手入れは業者任せにせず、自らエンジン式の草刈り機を担いで何時間も斜面を歩き回る日々。家庭菜園ではナメクジの駆除に追われ、冬が近づけば氷点下の寒さに備えて重い薪を運び、暖炉の火を熾す。指先にはタコができ、泥にまみれる生活を彼女は「生きている手応えがある」と誇らしげに語ります。
さらに頭を悩ませたのがドイツ語の習得です。英語やフランス語が堪能な中谷であっても、複雑な文法体系を持つドイツ語の壁は高く、現地の語学学校に通い、家庭教師をつけて机に向かう日々を重ねました。近隣住民との挨拶や役所での手続き、スーパーの買い物にいたるまで、自らの足と言葉で道を切り拓いてきた事実が、彼女の暮らしに本物の重みを与えています。