なぜ日本人は、この丸い和菓子の呼び名にここまで熱くなるのだろうか。
文化人類学の専門家は「幼少期の記憶と地域コミュニティへの帰属意識が結びついているからだ」と指摘する。お祭り、部活の帰り道、祖父母が買ってきてくれたおやつ。それぞれの思い出のシーンに刻まれた名前が、個人のアイデンティティの一部になっているのだ。
「今川焼き」と呼ぶ人にとって「大判焼き」はどこか他所の国の言葉のように感じられ、その逆もまた然り。この小さな境界線こそが、日本の多様なローカルカルチャーを守る防波堤になっているのかもしれない。