『Santa Fe』の出版は、単なる芸能ゴシップではなく、日本の法制度、メディアコード、表現の自由をめぐる議論を一変させた文化的事件でした。
1991年2月、同じく篠山紀信氏が撮影を担当した女優・樋口可南子の写真集『Water Fruit』(朝日出版社)において、陰毛の写り込みを修正せずに掲載したことで、いわゆる「ヘア解禁論争」が勃発していました。それまでの日本では刑法175条(わいせつ物頒布等の罪)の運用基準により、体毛の描写は厳格に規制・修正されていました。
しかし、『Water Fruit』に続いて18歳の国民的トップスターである宮沢りえの『Santa Fe』が登場したことで、議論は一気に臨界点を超えました。購買層は男性ファンにとどまらず、10代から50代の女性層、さらには文化人や美術関係者にまで波及。一般書店の平積みに堂々と置かれ、女性ファッション誌やワイドショーが連日特集を組んだことで、「ヘアヌード=芸術か猥褻か」という枠組み自体が世論によって書き換えられたのです。
この大ヒットを契機に、90年代前半の芸能界では有名女優やタレントによるヘアヌード写真集の出版ラッシュが巻き起こりました。時代が昭和から平成へと移り変わる中、バブル崩壊前後の閉塞感を打ち破る象徴的なエネルギーとして、この現象は日本社会に記憶されることになりました。