『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』において、「腹腔鏡の魔術師」こと加地秀樹は作品に欠かせない清涼剤であり、同時に緊張感をもたらすキーマンだった。テレビ朝日の看板枠として一世を風靡したこの医療ドラマで、彼は群れを好み、金を愛し、権力に弱い男を軽妙洒脱に演じきってみせた。
撮影現場でのエピソードは今も語り草だ。主演を務める米倉涼子とのやり取りは、台本通りの台詞を超えたアドリブの応酬になることが頻繁にあったという。緊迫した手術シーンの合間、二人が交わす何気ない軽口や視線の交わし合いが、結果として作中の名シーンを生み出した。現場スタッフによれば、勝村の即興演技に対する米倉の返しは阿吽の息であり、二人の信頼関係こそが長年シリーズを支えた原動力だった。
加地というキャラクターがあれほど愛され、スピンオフ作品まで作られるに至ったのは、単にコミカルだからではない。権力構造に翻弄される等身大の人間臭さを、勝村が絶妙な匙加減で匂わせたからだ。脇役としての引き算と足し算を知り尽くした彼だからこそ、主役を引き立てながら自らも強烈な光を放つことができた。