話は2000年代初頭にさかのぼる。『千と千尋の神隠し』の爆発的なヒット以降、日本のインターネット上では「湯婆婆の油屋のモデルは台湾の九份にある茶館だ」という説が瞬く間に広がった。しかし、スタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫氏をはじめ、制作陣は一貫してこれを否定している。宮崎駿監督が実際にロケハンや着想の源としたのは四国の道後温泉や江戸東京たてもの園であり、台湾の九份ではないというのが動かぬ史実だ。
では、なぜこの都市伝説は20年以上もの間、打ち消されるどころか強化され続けてきたのか。現地で長年ツアーガイドを務める男性は苦笑交じりに明かす。「かつて日本のテレビ番組や旅行雑誌が『モデルと噂される場所』と紹介したのが引き金でした。いつしか『噂される』という予防線が削ぎ落とされ、事実として一人歩きを始めたのです」。