インターネット上の掲示板やSNSでは、時折「いつも犯人役ばかり演じている俳優は主役になれない格落ちではないか」という誤った言説が見受けられます。しかし、これは映像制作の実態を全く知らない表面的な誤解に過ぎません。
キャスティングの現場において、犯人役や悪役のオファーは「作品の成否を託す最も信頼できる実力派」に対して最初に出されます。2時間サスペンスや連続ドラマにおいて、犯人の動機が陳腐に見えたり、追い詰められた瞬間の演技が軽かったりすれば、それまで積み上げてきた物語の緊張感がすべて崩壊してしまうからです。
主役は作品の「看板」としてスター性や好感度が重視される傾向にありますが、悪役は「物語の推進エンジン」として絶対的な演技力、声の説得力、表情の微細な変化をコントロールする職人的技巧が不可欠です。多くの名優たちが「悪役を完璧に演じ切ってこそ一人前の俳優」と語る通り、犯人役や悪役を専任的に任されること自体が、業界内における最高峰の信頼の証拠なのです。