かつてロンドン郊外住宅街に位置する駐英朝鮮民主主義人民共和国大使館で生じた公使の亡命事件は、世界中に激震を走らせた。当時公使を務めていた太永浩氏の亡命劇は、単なる一外交官の逃亡ではなく、平壌のエリート階層における思想的破綻を白日の下に晒す出来事だった。
公館の壁の向こうでは、本国からの厳しい通信検閲と、日常的な同僚同士の暗闘が繰り広げられている。ロンドンのような西欧の自由な空気に触れれば触れるほど、本国のドグマとのギャップは広がる。外交官たちの生活苦や、子供の教育を巡る苦悩が亡命への決定打となるケースは後を絶たない。