演歌や歌謡曲の現場は、過酷なスケジュールの連続だ。全国各地を巡る公演、テレビ番組の収録、そして深夜に及ぶ稽古。体が万全であっても体力を激しく消耗する世界で、喉の乾燥と全身の疲労に苛まれる日常は想像を絶するものだった。
ステージに上がる直前まで水分補給の工夫を重ね、点眼薬や特殊な保湿アイテムを手放せない日々。楽屋裏での必死のケアがあって初めて、あの艶やかな歌声が生み出されていた。歌唱中に突然喉がカラカラに乾く恐怖は、トラウマにも似た緊張感を伴う。思い通りに声が出ない歯痒さに、一人楽屋で涙を流した夜もあったという。
だが、彼女は歌うことを諦めなかった。声が出しづらい時期には発声法を一から見直し、体にかかる負担を最小限に抑えるボーカルアプローチを模索。完璧なパフォーマンスを求めるプロ意識が、病魔の影を微塵も感じさせない圧巻のステージを支え続けた。