ネット上で長年囁かれてきた「耳」にまつわる数々の噂。その真相を探るべく関係者へ密着取材を進めると、競技者時代の驚くべきエピソードが浮き彫りになった。公益財団法人日本スケート連盟や国際スケート連盟が主催する世界最高峰の大会において、彼女が極限状態の中で頼りにしていたのは、まさに研ぎ澄まされた聴覚の精度だったという。
大歓声が揺れるアリーナの真っ只中でも、会場のスピーカーから響く繊細なヴァイオリンの残響やピアノの倍音を、彼女は耳で完璧に拾い上げていた。三回転半ジャンプ(トリプルアクセル)の踏み切りから着氷に至るコンマ一秒のタイミングは、音楽のテンポを耳で正確に捉える高い音響感覚によって支えられていたのだ。噂された「耳の秘密」とは、過酷な競技生活で磨き上げられた天性の音感と集中力に他ならない。