しかし、映画デビューの華々しさは長くは続きませんでした。当時の日本映画・テレビドラマ界において、阿部寛の身長189cmという規格外のスタイルは、大きなアドバンテージではなく致命的な障壁となったのです。
当時の映像制作現場では、日本人女優の平均身長が155cm〜160cm前後だったこともあり、画面内でツーショットを収める際にカメラアングルが破綻する、相手役の男性俳優より目立ちすぎてしまうといった理由から、キャスティング会議で敬遠される事態が頻発しました。「背が高すぎて使いにくい」という業界の不文律が、彼の前に巨大な壁となって立ちふさがったのです。
さらに彼を追い詰めたのが、阿部寛 不遇時代 借金の真相として知られるバブル経済の罠でした。モデルとして高収入を得ていた20代前半、税金対策として勧められるがままに購入した投資用マンションが、1990年代初頭のバブル崩壊によって暴落。多額の債務だけが手元に残り、数千万円から一説には数億円規模とも言われる巨額の借金を抱えることになります。
仕事のオファーは激減し、表舞台から姿を消した時期について、本人は自著『アベちゃんのバカ』や後年のロングインタビューで阿部寛 下積み時代 パチンコ生活の経緯を赤裸々に告白しています。「朝から並んでパチンコを打ち、その日の生活費を稼いで命をつないでいた」「仕事がない3年間、世間から完全に忘れ去られていく恐怖があった」と語る通り、かつてメンズノンノの表紙を独占していたトップモデルは、底知れぬ孤独と貧困の底に沈んでいました。