吉川ひなのが一世を風靡した90年代と、多様性が当然の前提となった現在とでは、日本のメディアにおけるルーツ表現のあり方が根本から異なる。当時は異国情緒やエキゾチックな魅力を強調する文脈で血統のラベルが使われがちだった。しかし、現在の言論空間においては、そうした一面的なラベル貼りは急速に姿を消しつつある。
吉川ひなのの足跡を振り返ると、日本のファッション界が「異質な可愛さ」から「個性の尊重」へと変化していくグラデーションがはっきりと見えてくる。彼女が投げかけてきた独特の存在感は、単なる時代のトレンドに消費されることなく、多様な文脈を背負った表現者としての地位を確立する道筋となった。