大奥というシステムを完成させたのは、3代将軍家光の乳母である春日局だ。彼女は大奥の職制を整え、表(男性官僚の執務エリア)と奥(将軍の私的空間)を隔てる「御鈴廊下」の厳格なルールを制定。女性による統治機構の骨格を作り上げた。
時を経て幕末、崩壊の危機に瀕した徳川将軍家を支えたのが天璋院篤姫である。薩摩藩から輿入れした彼女は、養父・島津斉彬の密命を帯びながらも、大奥の最高責任者としての責務を全うした。14代将軍継嗣問題では一橋派を支持しつつ、幕府瓦解の局面では徹底抗戦を避け、勝海舟らと連携して江戸城無血開城に決定的な役割を果たす。政治の表舞台に立つ男性官僚たちが混乱するなか、大奥の頂点に立つ女性指導者たちが国家の舵取りを担っていた。