ディーゼル車を選ぶかガソリン車を選ぶかを合理的に判断する上で、避けて通れないのが「初期投資の回収性」です。新車時において、同一車種の車両本体価格とリセールバリューを比較すると、ディーゼル仕様はガソリン仕様に対しておよそ20万〜40万円高くプライシングされています。
多くの消費者が陥りがちなのが、目先の給油スタンドで支払う金額の差に目を奪われ、初期投資の大きさや年間の固定差額を過小評価してしまう行動経済学的な「認知バイアス」です。車両本体の差額を燃料代の差だけで回収するには、実際にどれほどの距離を走る必要があるのでしょうか。
具体的な試算を行ってみます(レギュラーガソリン175円/L・実燃費13km/L、軽油155円/L・実燃費17km/L、本体価格差30万円と仮定)。
- ガソリン車で1km走行するための燃料費:約13.5円
- ディーゼル車で1km走行するための燃料費:約9.1円
- 1km走行あたりの燃料費差額:約4.4円のディーゼル優位
本体価格の差額30万円をこの燃料費差額だけで回収しようとした場合、単純計算で約6万8,000kmの走行が必要になります。しかし、前述した通りディーゼル車には専用オイル交換費用やアドブルー代が追加で発生するため、実際の実質差額は1kmあたり3.5円前後に縮まります。これらを加味した真の損益分岐点は、およそ8万〜9万km前後の走行距離に達します。
このデータから導き出される年間走行距離別の損益分岐点の基準は極めて明快です。
- 年間走行距離5,000km未満(サンデードライバー・街乗り中心):
10年乗っても5万kmに届かず、燃料代で車両価格差を回収することは不可能です。DPF詰まりのリスクも高く、トータルコストで確実にガソリン車のほうが安上がりになります。 - 年間走行距離10,000km前後(通勤・レジャーの標準ユーザー):
初期費用の回収に8〜9年を要します。車検やメンテナンス費用を差し引くと、経済的なメリットはほとんどトントンにとどまります。 - 年間走行距離15,000km〜20,000km以上(長距離通勤・アウトドア派):
4〜5年で初期差額を完全に回収可能。距離を走れば走るほど軽油の安さと高燃費の恩恵が累積し、ディーゼル車ならではの経済性が圧倒的な強みを発揮します。
ただし、リセールバリューの観点からは救いもあります。ランドクルーザーやハイラックス、ハイエースといった耐久性が命のモデルや、マツダの大型SUV(CX-60など)の中古車相場では、海外輸出需要やトルクフルな走りを求める層に支えられ、下取り・買取額が高値で推移する傾向があります。3〜5年で売却する場合、購入時の価格差の大部分が売却価格に還元されるケースもあり、一概に燃料費だけで損得を断定できないのが現代の中古車流通の実情です。