さだまさしの手記や当時のインタビューを紐解くと、この楽曲の真意は威張り散らす男の賛美などではなく、むしろ「不器用で情けない男の泣き落とし」であったことが明確に語られています。歌詞の構造を丁寧に読み解くと、見事な起承転結で男の心理的防衛機制が解体されていく様が描かれています。
前半で「俺の顔色をうかがえ」「親父とオフクロを大切にしろ」と高圧的に条件を並べ立てた後、曲の中盤からトーンが変わり始めます。「忘れてはいけない、俺の愛する女房は世界にお前ひとり」「お前の幸せ勝ち取るために俺は命をかける」と、本音の覚悟が吐露されます。そして楽曲のラスト結末では、以下のような決定的な懇願が歌われます。
「俺より先に死んではいけない、お前のおかげでいい人生だったと俺に言わせろ、必ず俺より後に死ね」
先に逝かれて残されたら生きていけないという、男側の絶対的な弱さと妻への精神的依存の告白にほかなりません。最初の「俺より先に寝るな」という命令が、最後には「俺より先に死ぬな」という切実な願いへと反転するレトリック。強がりを装わなければプロポーズすらできなかった昭和の不器用な男が、全人格を投げ出して妻に生涯の忠誠を誓うプロポーズソングこそが、『関白宣言』の真の姿でした。