1972年2月28日、警察はついに巨大なクレーン車に吊るした「鉄球」を使って山荘の外壁を破り、突入を敢行した。この緊迫した終末劇を、NHKと民放各社は朝から晩まで生中継で全国に届け続けた。この日の民放とNHKを合わせた総視聴率はなんと89.7%に達した。日本中の人々がテレビの前に釘付けになり、一挙手一投足を見守ったのである。
鉄球が壁を打ち砕く音、飛び交う銃声、催涙ガスが充満する現場の緊迫感は、茶の間に強烈な臨場感をもたらした。一方で、機動隊員たちが寒さを凌ぐために食べていた湯気の立つ「カップヌードル」が画面に映し出されたことで、当時はまだ珍しかった即席麺が一躍全国区のヒット商品になるという社会現象も生んだ。視聴者参加型のリアルタイム報道の原点は、間違いなくこの報道によって作られた。しかし、警察の作戦が犯人側にもリアルタイムで筒抜けになるリスクや、過度な過激映像の垂れ流しという報道倫理の問題を提起した事件でもあった。