ネット上で「世界一甘いお菓子」として確固たる地位を築いているスイーツの正体は、南アジア全域で愛されている球状の揚げ菓子「グラブジャムン」です。名前の由来は、ペルシャ語で「バラ(Gulab)」と、インド原産の果物「ジャムン(Jamun:紫がかった楕円形の果実)」を組み合わせたもの。その優雅な名とは裏腹に、食べた者が一様に絶句する驚異的な甘さの秘密は、その極めて特異な製法にあります。
一般的なドーナツとの決定的な違いは生地のベースです。グラブジャムンは小麦粉を主役とせず、牛乳を弱火で何時間も煮詰めて水分を極限まで蒸発させた「コア(Khoa / Khoya)」と呼ばれる濃厚な乳固形分を使用します。これにごく少量の小麦粉を加えて滑らかにこね上げ、丸めて澄ましバター(ギー)でじっくりと揚げます。
そして最大の特徴が仕上げの工程です。揚げたての熱い団子を、砂糖と水を煮詰めてカルダモンやサフラン、ローズウォーターで香りをつけた「過飽和状態の砂糖シロップ」に投入します。組織の隅々までシロップが浸透するまで数時間から一晩漬け込むため、スプーンを入れればスポンジが水を吐き出すように、濃密な糖液がどっと溢れ出すのです。
一口かじれば、外側の香ばしさを超えて中からドロッと濃厚なシロップが噴出します。「甘い」という知覚を通り越し、「喉の奥がチクチクと熱くなる」「脳が一瞬フリーズする」と表現される現象は、糖度(Brix値)がジャムや練乳の限界値に匹敵する65度以上に達していることに起因しています。