ネット上の旅行ブログやSNSで散見される誤解の一つに、「金剛峯寺を見学したから高野山観光は完了した」という認識があります。しかし、これは高野山の本質を見落とす大きな盲点です。
前述の通り、金剛峯寺本坊は高野山真言宗の「統括・行政センター」であり、空海が密教の真理を物理的空間に現出した修練場は壇上伽藍です。そして、空海が永遠の瞑想に入っているとされる信仰の核は奥之院にあります。
本坊だけを見学して帰路についてしまうと、「美しい庭園と襖絵がある大きなお寺」という表面的な印象だけで終わってしまいます。本坊で美術と歴史の背景をインプットした上で、壇上伽藍の根本大塔で立体曼荼羅の圧倒的迫力に触れ、奥之院の杉木立の中で生身供(しょうじんぐ)の儀礼や祈りの空気に包まれる。この「三位一体の巡礼」を完結させて初めて、高野山が世界遺産として称賛される真の理由が理解できます。