十朱幸代の名は、日本映画界の金字塔と不可分に結びついている。清純派としてスタートを切りながらも、次第に大人の情念や狂気を帯びた複雑な女性像を演じ分け、圧倒的な実力派へと脱皮を遂げた。
代表作を挙げればきりがない。相米慎二監督の『魚影の群れ』で見せた狂おしいまでの情感、降旗康男監督の『極道の妻たちII』で放った凛冽な凄み、そして舛田利雄監督の『社葬』における重厚な演技合戦。いずれの作品でも、男社会の論理に翻弄されながらも毅然と立ち向かう女性を演じ切り、日本アカデミー賞協会の優秀主演女優賞をはじめとする数多の映画賞を総なめにした。
観る者の胸をえぐるような台詞回しと、憂いを帯びた瞳の表情。彼女が残した名場面の数々は、今なお後進の俳優たちにとって生きた教科書として尊敬を集めている。