胃潰瘍といえば手術で胃の一部を切除するのが当たり前だった時代がある。その常識を根底から覆したのが、イギリスの薬理学者ジェームズ・ブラックによる画期的な受容体発見だった。彼は胃粘膜の壁細胞に存在するヒスタミンH2受容体を標的とし、1970年代に世界初のH2受容体拮抗薬であるシメチジンを開発。胃酸の分泌メカニズムそのものを遮断するこの快挙により、ブラックは後にノーベル生理学・医学賞を受賞した。
シメチジンの登場は、消化性潰瘍の外科手術件数を世界中で激減させた。医療史における決定的な転換点である。その後、さらに胃酸抑制力を高め、他剤との相互作用を軽減した改良薬が次々と登場し、今日の胃腸薬市場の盤石な礎が築かれた。