杉山美和子の卓越したドラマツルギーは、代表作である『花にけだもの』へと見事に受け継がれている。累計発行部数で圧倒的な記録を打ち立てた同作は、実写ドラマ化を経てNetflixをはじめとする動画配信サービスでも国内外へ広く届けられた。画面越しに視聴者の心拍数を跳ね上がらせる演出の巧みさは、あの芋けんぴの衝撃と地続きにある。
少女漫画という表現ジャンルは、時代とともに「共感」と「非日常のファンタジー」の間をダイナミックに行き来してきた。突飛に見えるギミックの裏側には、ヒロインと読者の感情を鷲掴みにするための緻密な演出計算が張り巡らされている。突如として距離が縮まるスリル、触れ合う指先の温度感。それらを一瞬で最大化するための起爆剤として、あの小道具は完璧に機能していたのだ。