目白 志むらの暖簾をくぐると、山手線沿線の賑やかさをふっと忘れさせるような、どこか懐かしく温かな空気に包まれる。昭和14年(1939年)の創業以来、職人が長年かけて磨き上げてきた伝統の技と、和菓子本来の優しさを守り続けている老舗だ。名物の和菓子はもちろん、器の端に聳え立つ圧巻のルックスでスイーツ愛好家を唸らせる「かき氷」を目当てに、今日も多くの人々がこの地に足を運ぶ。
賑やかな都心の目白通りに佇むこの店だが、目白 志むらが放つ特別な存在感は時代が変化した2026年の今も変わらない。単なるレトロブームに留まらず、本物の味わいと洗練された手仕事が融合した空間として、若者からシニア層、さらには訪日外国人観光客までを引き寄せてやまないのだ。
視線を奪う「断崖絶壁かき氷」の圧倒的存在感と果肉感
初めてこの店のかき氷を目にした人は、例外なく息をのむ。器の片側に寄せて盛られた氷は、まるで削り立った崖のような急斜面を描く。通称「断崖絶壁」と呼ばれるその大胆なフォルムは、SNS全盛の現代においても圧倒的なビジュアルインパクトを放っている。
だが、真の魅力はその造形美だけにとどまらない。看板メニューである「生生いちご」にかけられた自家製シロップは、果肉の粒感が贅沢に残る濃厚な仕上がりだ。一口含めば、甘酸っぱい苺のフレッシュな香りとふんわりと削られた繊細な氷が口の中で優しく溶け合い、果実そのものを食べているかのような満足感が広がる。
看板銘菓子「九十九餅」に宿る職人のこだわりと変わらぬ伝統
かき氷と並び、長年店を支えてきた看板商品が「九十九餅(つくももち)」だ。全卵を練り込んだ求肥(ぎゅうひ)の生地は、驚くほど柔らかく、モチモチとした独特の食感を生み出している。
生地の中に惜しみなく混ぜ込まれているのは、じっくりと蜜煮された虎豆。この虎豆の風味と、表面に贅沢に塗された香り高いきな粉のバランスが秀逸で、一口ごとに上品な甘みが広がる。創業当時から引き継がれてきた職人の試行錯誤と丁寧な仕込みが、今も変わらず一つひとつの餅に息づいている。