霧島の豊かな火山灰土壌と湧水群に囲まれたこの地で、正現稲荷神社は幾世代にもわたり崇敬を集めてきた。主祭神として祀られているのは、生命の根源たる食糧を司る宇迦之御魂神である。京都の総本宮である伏見稲荷大社から分霊を勧請したとされるこの社は、単なる地方の小祠ではない。日本古来の神道が大切にしてきた自然崇拝と、神社本庁が連綿と受け継ぐ伝統的な祭祀体系が見事な調和を保ちながら息づいている。
記録によれば、かつての修験者や地元の農民、そして街道を行き交う商人たちが道中の安全と実りを祈願したのが発祥とされる。火山活動とともに生きてきた霧島の人々にとって、大地の恵みと荒ぶる自然を鎮める祈りは切実な営みそのものだった。幾度の火災や風雪を乗り越え再建されてきた社殿には、時を超えて受け継がれる強固な祈りの磁場が宿っている。