人間が声を出すとき、肺から送り出された空気が喉にある声帯を振動させ、その振動が喉や口、鼻の空間(声道)で共鳴して外へと放たれる。私たちが日常吸っている空気中の音速は約340m/s。これに対して、ヘリウムの中を音が伝わる速度は約970m/sから1000m/sと、空気のほぼ3倍に達する。
日本化学会などの専門機関も解説するように、気体の密度が低ければ低いほど、音波は軽やかに、そして猛スピードで空間を駆け抜ける。音響工学の観点から見ると、声道という決まった大きさの「共鳴パイプ」の中を猛スピードで音波が往復するため、共鳴する周波数帯(フォルマント)が全体的に高い帯域へとシフトするのだ。これが、ヘリウムによって声の質感が一変する物理的な根本原理である。