この深い認識論の危機に対し、テクノロジー側も手をこまねいているわけではない。暗号学者たちは、ブロックチェーンや分散型タイムスタンプ、さらには量子力学的な「不可逆な物理変化」を記録するバイオロギング技術を用いて、個人の履歴が捏造されていないことを証明しようと試みている。
しかし、ここにも根本的なパラドックスが付きまとう。どれほど厳密な暗号署名やタイムスタンプが存在していたとしても、「その暗号データ自体が、5分前に署名済みの状態で生成された」という可能性を拭い去ることはできないからだ。技術がどれほど高度化しても、主観の壁を突破して「絶対的な過去」に到達することは叶わない。