いま振り返っても、2012年のロンドンオリンピック女子バレーボールで掴み取った28年ぶりの銅メダルは、日本スポーツ史に残る金字塔だった。名将・眞鍋政義が仕掛けた緻密なデータバレーの中心で、戦術をコート上で具現化していたのが木村沙織という柔軟なピースだった。
現在も代表指揮官を務める恩師・眞鍋政義との対談や現場訪問の場において、彼女が投げかける言葉には一切の淀みがない。熾烈を極めるFIVBバレーボールネーションズリーグなどの国際大会を戦う火の鳥NIPPONの後輩たちに対し、彼女は上から目線の助言ではなく、極限状態を経験した者だけが知る「コートで自分らしく呼吸する方法」を静かに説き続ける。その視座の高さは、戦術論を超えたメンタルサポートとしてチームに深い影響を与えている。