「人に好意を持って接すれば、相手も自分を好いてくれるはずだ」という素朴な期待は、人間関係における最大の錯覚の一つです。心理学における「好意の返報性」は確かに存在しますが、それは自律した対等な関係においてのみ機能します。迎合や怯えから生じる「過剰な配慮」は、相手に重圧や不自然さを与えてしまいます。
ここで知っておくべき心理力学の原則があります。組織における人間の感情分布は、一般に「2:7:1の法則」に収束します。
・2割の人:あなたがどんな言動をとろうと、好意的に受け止めてくれる
・7割の人:状況や利害関係によって評価が変わり、どちらでもない
・1割の人:あなたがどれほど努力しても、生理的・構造的にあなたを好かない
「人に嫌われたくない」と強く願う人は、この「絶対に自分を好かない1割」や「流動的な7割」を振り向かせようとエネルギーの大半を浪費しています。その結果、本来大切にすべき「自分を支持してくれる2割」との関係に割くべきリソースが枯渇するという、本末転倒な事態を招いているのです。