王道の少年漫画において、オタクや肥満体型のキャラクターはコメディリリーフや無力な被害者として描かれるのが定石だった。しかし、本作はそのステレオタイプを真っ向から粉砕する。ミルキは笑いを誘う見た目でありながら、躊躇なく人を殺し、冷徹に大金を動かし、目的のためなら身内すら取引の材料にする本物の怪物だ。
ダーク・ファンタジーとしてのリアリズムを突き詰める冨樫義博の手腕は、善悪の二元論を軽々と飛び越える。どれほど滑稽に見える人間であっても、特定の分野を極めた者は凄惨な脅威となり得る。この容赦ない世界観の構築こそが、連載開始から長い年月を経てもなお読者の心を掴んで離さない理由である。