多くの学校教育やクイズ番組、インターネット上の情報サイトで「青=ヨーロッパ、黄=アジア、黒=アフリカ、緑=オセアニア、赤=南北アメリカ」といった解説を目にしたことがあるはずです。しかし、この言説は国際オリンピック委員会(IOC)の公式見解において完全に否定されている俗説にすぎません。
IOCが定める根本規範『オリンピック憲章』のシンボル規定第8条では、5つの輪について明確に定義しています。「世界5大陸(ヨーロッパ、アジア、アフリカ、オセアニア、アメリカ)の団結、ならびにオリンピック競技大会に世界中から選手たちが集うことを表す」と記されているものの、特定の色と大陸を1対1で対応させた記述は過去から一度も存在しません。
本来の設計思想は極めて明快でした。クーベルタン男爵が残した文章によれば、リングの5色に旗地である「白」を加えた合計6色(青・黄・黒・緑・赤・白)によって、「当時の世界のあらゆる国旗に用いられている色彩を網羅できる」という発想から選定されました。フランスのトリコロール、ドイツの黒赤金、スウェーデンの青黄、星条旗や日の丸に至るまで、少なくとも1色はどの国の国旗にも必ず含まれている状態を作り出すことで、文字通り「地球上のすべての国域を包摂するシンボル」を創り上げたのです。