法要の準備段階では、対面だけでなく電話対応や書面でのやり取りが頻繁に発生する。媒体ごとに求められる正確なプロトコルを押さえておくことで、無用な礼儀違反を回避できる。
1. 電話口でのお坊さんの呼び出し方
寺院へ電話をかけた際の第一声は、自らの立場を明確にし、代表者を丁重に呼び出すのが鉄則である。
「恐れ入ります、〇〇家(檀家名)の〇〇でございます。いつも大変お世話になっております。ご住職様はいらっしゃいますでしょうか」
電話に出たのが住職の配偶者(寺族・坊守)や家族であることも多いため、「お坊さんをお願いします」といった雑な取り次ぎ依頼は厳に慎まなければならない。
2. 手紙・ハガキ・お礼状での宛名表記
書面で最も誤りやすいのが「二重敬語」の罠である。手紙の宛名に「〇〇寺 ご住職様」と書く人が後を絶たないが、「住職」自体が役職名であるため、「様」を重ねるのは文法上不自然とされる場合がある。最もフォーマルな記載例は以下の通りだ。
- 基本の宛名:「〇〇寺 住職 〇〇〇〇(個人名)様」
- より丁寧な表現:個人名の左下に「侍史(じし)」または「机下(きか)」という脇付(わきづけ)を添える。
- 個人名が不明な場合:「〇〇寺 御中」または「〇〇寺 ご住職様」(※民間慣習として許容される範囲)
3. お布施袋・不祝儀袋の表書き
お布施の表書きにおいて、水引の上に「御布施」、水引の下中央に「施主の家名(例:〇〇家)」または「施主の氏名」を記すのが基本ルールである。時折、袋の表や裏に「〇〇寺 住職様へ」と宛名を書いてしまう受取人指定の誤りが見受けられるが、お布施は本来「本尊への感謝の奉納」であり、僧侶個人への対価やチップではないため、宛名を書く欄は存在しない。