「子どもの頃にピアノを習っていなかった」「楽譜がすらすら読めない」という大人であっても、周囲をあっと言わせる演奏を披露することは十分に可能だ。要は「見せ場があり、かつ技術的エラーが起きにくい構造」の楽曲を選ぶことにある。ここに大人のピアノ独学おすすめ曲の本質がある。
指の俊敏な独立や超高速パッセージを必要とせず、初心者向けかっこいい曲として圧倒的な費用対効果(練習時間に対する見栄え)を誇るのが、久石譲の『Summer』や坂本龍一の『Merry Christmas, Mr. Lawrence(戦場のメリークリスマス)』だ。これらの作品は、右手は覚えやすいペンタトニック(5音音階)や美しい単音メロディが中心でありながら、左手にアルペジオや豊かな響きのコードが配置されているため、ペダルを効果的に踏むだけでホール全体を満たすような深い響きを演出できる。
さらに、一目置かれる存在を目指すなら、ジャズピアノ即興人気曲への入門も極めて賢明な選択肢となる。代表曲である『枯葉(Autumn Leaves)』は、「ツー・ファイブ・ワン(II-V-I)」と呼ばれるコード進行の基本が凝縮されており、左手でルート(根音)とガイドトーンを押さえ、右手でブルーススケールを数音鳴らすだけでも、洗練された大人のアドリブ演奏として成立する。
クラシックのように「書かれた音符を一音の狂いもなく再現する」プレッシャーから解放され、リズムの揺らぎや音の「間」で聴かせるアプローチは、人生経験を積んだ大人の独学者にこそ適した表現手法と言える。