本作を語る上で見逃せないのが、1988年に発表された原著絵本『I'll Always Love You』から、日本の評論社による翻訳絵本、そして光村図書による小学1年生の国語教科書への採択という歴史的経緯です。実は、市販されている絵本版と、子どもたちが学校で開く教科書版とでは、タイトル表記やテキストの細部に明確な違いが存在します。
出版業界および教育資料のデータによると、作者のハンス・ウィルヘルム氏は西ドイツに生まれ、アメリカ合衆国コネチカット州へ移住する前はアフリカに長期滞在していたという異色の経歴の持ち主です。コネチカット州の古い農家に住み、納屋をスタジオ代わりに創作に励みながら、これまでに150冊以上の児童書にイラストを描き、彼の著作の200冊以上が世界20言語に翻訳されています。
その膨大な作品群の中でも、久山太市氏の翻訳によって日本に紹介された本作は、1992年の小学1年生の教科書(光村図書『こくご 一下 ともだち』)に採用されたことで、世代を超えた国民的テキストへと昇華しました。1985年生まれ以降の日本人の多くが、7歳の春にこの物語を通過している計算になります。