「うちの会社には36協定がないらしいが、毎日当たり前のように残業させられている」「36協定未締結の職場で残業を断ったらクビになるのか」――労働相談の現場やSNS上では、自社の労務管理に疑念を抱く切実な声が絶えません。時間外労働の上限規制が社会全体に浸透した2026年現在においても、労働基準法第36条に基づく労使協定(通称:36協定)を結ばないまま、慣習的に従業員を時間外労働に従事させている企業は後を絶ちません。
原則として、36協定を締結・届出しない状態での時間外労働は明確な労働基準法違反です。しかし、実は業務実態や就業規則の設定次第では「締結していなくても完全に合法」となる例外ケースが存在し、現場の混乱に拍車をかけています。本記事では、即座に違法となるラインと合法ケースの決定的な分岐点から、会社に科される罰則、違法残業を拒絶する正当な権利、さらには労基署への通報と会社都合退職の判断基準まで、一次情報と現場取材の視点から徹底的に解明します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】- 要点1:36協定がない会社で「1日8時間・週40時間」の法定労働時間を1分でも超えて働かせる行為は刑事罰の対象となる違法行為。
- 要点2:所定労働時間が7時間の企業で1時間以内の残業を行うなど、法定労働時間内に収まっている場合は協定なしでも合法となる「抜け穴」が存在する。
- 要点3:協定未締結での残業命令には判例上も服従義務がなく、違法残業が常態化している職場からの離脱は「会社都合退職」として認定される道がある。
【違法か合法か】36協定がない会社での残業が直ちに違法となる決定的な境界線
会社が従業員に法定労働時間を超えて働かせる、あるいは法定休日に出勤させる場合、労働基準法第36条に基づく書面協定の締結と所轄労働基準監督署長への届出が必須です。この手続きを怠っている会社が時間外労働を命じる行為こそが、いわゆる36協定なし違法理由の核心にあたります。労働基準法第32条では「1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならない」と厳格に定められており、36協定はこの原則を一時的に解除する「免罰効果」を持つに過ぎません。免罰の盾を持たない企業が残業を課すことは、法律上許されない暴挙です。
しかし、現場を混乱させるのが「残業をしているのに違法にならない」という36協定不要の合法ケースの存在です。その境界を分ける鍵は、法定労働時間と所定労働時間の違いにあります。
例えば、会社の就業規則で定められた所定労働時間が「午前9時〜午後5時(休憩1時間、実働7時間)」だったとします。この職場で1時間の残業を命じられ、実働8時間となった場合、会社側の取り決めである所定労働時間は超過していますが、法律が定める「1日8時間」の法定労働時間枠には収まっています。労働基準法上の時間外労働が発生していないため、この範囲内であれば36協定を締結していなくても法的に直ちに違法とはなりません。
反対に、所定労働時間が8時間の会社で1分でも残業が発生した場合、あるいは7時間勤務の会社で2時間以上の残業が発生して実働が8時間1分に達した瞬間、協定未締結の企業は即座に労働基準法違反へと転落します。また、従業員を一切雇用していない「個人事業主や役員のみの企業」を除き、労働者を1名でも雇っている企業で法定労働時間を超える残業が発生する余地があるならば、36協定の未締結は重大な労務リスクそのものです。
【徹底比較】36協定未締結企業の実態と科される法的リスク一覧
協定を結ばずに時間外労働を強いる企業には、看過できない行政処分や刑事責任が定められています。企業統治の甘さがどのようなペナルティに直結するのか、適正に締結している企業との差異を客観的な指標で比較します。
上記の通り、未締結企業における時間外労働は「上限規制を守れば許される」という類のものではありません。会社代表者や労務担当役員個人に対しても刑事責任が追求される可能性がある極めて危険な違法状態です。