「あら川の桃」というブランドは、単一の品種を指す言葉ではない。初夏から真夏にかけて、性質も味わいも異なる品種が次々とバトンを渡していく、約2ヶ月間のドラマそのものだ。
口火を切るのは、6月中旬から下旬にかけて出荷される早生(わせ)の代表格「日川白鳳(ひかわはくほう)」だ。小ぶりながら果汁が豊富で、初夏の渇いた喉を一気に潤す瑞々しさを持つ。続いて7月上旬から中旬、産地が最大の出荷ピークを迎える主力が「八幡白鳳」そして「白鳳」である。果肉はとろけるように柔らかく、酸味をほとんど感じさせない芳醇な甘みが広がる。
7月下旬に登場するのが、贈答用として最高峰の評価を受ける「清水白桃」だ。乳白色の透き通るような肌と、高貴な香りはまさに桃の女王。そして8月上旬、シーズンを締めくくる「川中島白桃」へと繋がる。川中島はしっかりとした硬めの果肉と濃厚なコクが特徴で、近年は「硬い桃をカリッと食べるのが好き」という若い世代の支持を集めている。2026年の収穫リレーは、この順序をほぼ保ちながらも、白鳳から清水白桃への移行がやや早まる見通しだ。