ネット上の古い体験談ブログや数年前のSNS投稿を読んでいると、「美容院でドネーションカットをしたら、お店がそのまま送ってくれた」という記述が散見されます。しかし、その情報を鵜呑みにしてサロンに行くと、思わぬギャップに直面します。
日本における草分け的団体である「JHD&C(ジャーダック)」をはじめとする主要受け入れ団体では、2026年7月をもって理美容室による毛髪の代理送付受領を全面的に停止しました。現在では、カットされた髪の毛はドナー本人が持ち帰り、自らの手で梱包して発送手続きを行う規定となっています。
この劇的なルール改定の背景には、大きく分けて3つの切実な理由が存在します。
第一に、個人情報保護と追跡確認の透明化です。美容室が複数人分の毛髪をまとめて発送していた旧方式では、誰の髪がいつ届いたのか、ドナーシートの記載と現物の照合に膨大な確認コストが発生していました。万が一の配送事故や紛失が生じた際にも、サロンとドナーの間で責任の所在が曖昧になるリスクが指摘されていたのです。
第二に、サロン現場の過剰負担の解消です。全国の賛同サロンは善意のボランティアベースで協力している店舗が多く、毛髪の保管、梱包資材の調達、送料の立て替えや郵便局への持ち込みといった事務作業が美容師の通常業務を圧迫していました。継続的な支援の仕組みを守るためにも、現場への過度なしわ寄せを是正する必要がありました。
そして第三が、「寄付というアクションそのものをドナー自身が実感する」という理念への回帰です。美容師任せにするのではなく、自分が伸ばした髪を自らの手で封筒に入れ、郵便ポストに投函するプロセスを通じて、支援の主体者としての意識を深めてほしいという団体の想いが込められています。
この変更経緯を知らないまま来店すると、「不親切な美容室に当たってしまった」と要らぬ不信感を抱くことになりかねません。「サロンはカットと毛束作りまでを担当し、発送は自分で行う」というのが、現在の揺るぎない共通認識となっています。