映画監督や脚本家、そして共演者たちが口を揃えて称賛するのが、小林薫の「引き算の演技」です。感情を過剰に爆発させるのではなく、わずかな視線の揺らぎ、煙草を吸う指先の動き、沈黙の間(ま)によって、登場人物の生い立ちや葛藤を観客に想像させる力を持っています。
「多くを語らずとも、そこに居るだけで人生が見える」と評されるその存在感は、長年のキャリアと私生活の酸いも甘いも噛み分けた人間的な厚みから滲み出るものです。流行に流されず、自身の美学を貫く佇まいが、若い世代の俳優たちにとっても憧れの指標であり続けています。